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サービスとは、「人の手を介してその人が必要とするものや役務を提供すること」です。ご質問には「サービス業の意味するサービス」と「おまけをする意味でのサービス」とが含まれており、その点を整理されることがまず必要です。 さらに、費用を支払えない患者に対するサービスの手法としてこの質問にお答えするならば、まずは「仕事」と「ボランティア」を識別しておくことと、医療の公共性という視点を明確にしておきたいと思います。 ・仕事とは:社会的分業制の中で社会が必要とする必要性産物(物・サービス)を一定の時間内で生産し提供すること ・ボランティアとは:一定の時間内やコストの制限の中では提供できないが、社会が必要とする生産物を提供すること 医療はその公共性の高さから「医は仁術」の言葉に代表されるような奉仕のイメージが強いものですが、すべての仕事は種類に関わらず社会的分業性の中に成り立っているものであり、医療だけが特別の扱いになるものではないと考えます。理由として、医療機関はその活動により収益を生み出し、それをスタッフ、家族、業者に対して報酬として分配していることからも明確です。私財を投げ出し、より良い医療提供のために食えない医療機関を経営される医療者はいないのではないでしょうか。 さて、「医療は患者のものである」という観点に立ったなら、患者は自分の価値観と環境の制限の中で許せる最善の判断を患者自身の自由意志ですることが重要で、そのことによって患者責任が明確に生じます。「患者のことを思いやって」というパターナリズムの倫理基盤をベースにすると、患者が患者としての責任を考える機会を奪うことになってしまいます。さらに歯科的疾患の慢性疾患、生活習慣病という側面を考慮したときそれはより大きな問題を投げかけます。患者は健康獲得を医療者に委ねるのでは無理があることを直視し、自らが主体となって健康獲得に取りくまなければなりません。そのような理由から、おまけをするような中途半端な思いやりはすべきではないでしょう。価格にはそれなりの理由があるのです。実際にこのようなケースであれば、私はその方の状況で問題解決ができる方法を共にしっかりと考えます。患者の予算内で取り組む代案を提示したり、支払方法で配慮をしたりしています。過去に大学1回生の患者が、貯金とアルバイトの収入での支払いを希望したので、約100万円の治療費を金利なしで4年間毎月2〜3万円の分割で受け付けたこともあります。あるいはその予算内での問題解決に対し、質の高いレベルでの対応が可能な医療機関(たとえば大学病院)などを患者の意向が反映されるような紹介状を添えて紹介することもあります。金額をおまけすることで喜ぶ方は私も含め世の中には多いものですが、逆にそのようにされることを嫌がる方も実在します。善意の押し売りはせず、同じ立場で問題解決の方法をしっかりと考えるようにしています。
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