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身体のあちこちにある脂肪組織は、余分な栄養を貯蔵するために働いています。必要なときにはそこからエネルギーを全身に送り届けます。その脂肪は中性脂肪と呼ばれ、大変効率のよいエネルギー源ですので、ほとんどの生物に貯蔵脂肪があります。多くの動物にとってえさを見つけるには大変なことですので、えさにありついたときの余分なエネルギーを、蓄えられる能力を身につけていきました。人類もその進化の過程では、飢えとの戦いでした。生き残るためには、摂取したエネルギーを効率よく体内にためることが必要だったのです。 食後、膵臓から分泌されるインスリンの働きで、血中のブドウ糖や脂肪酸を材料に脂肪細胞内で中性脂肪として蓄えられます。夜間や空腹時にインスリンのレベルが下がり、中性脂肪が分解されエネルギーに変換されます。この働きのなかで、脂肪の合成が多ければ肥満になり、分解が勝ればやせます。 インスリンの分泌は、ヨーロッパ系の人では高く、アジア人では低いことが分かっています。アジア人はインスリンを分泌する膵臓ランゲルハンス島の容積が小さいため、欧米人に比べ軽度の肥満でも糖尿病になりやすいといわれています。アジア人の低蛋白低脂肪の食事がインスリン分泌を少なくてすむ体質を作ってきたと説明されています。しかし戦後食事が急速に欧米化し、運動も少なくなったため糖尿病患者が増えたのです。
『“食育”は歯科医療を変える』 クインテッセンス出版株式会社 丸森 英史 より
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