|
こんなに怖い食べすぎの害 〜血管壁が痛めつけられる〜 摂りすぎた栄養が病に結びつく
過剰に摂られた栄養は、中性脂肪として脂肪細胞に蓄えられ肥満につながります。この肥満にともなう脂肪細胞からはさまざまな活性物質がだされ、高血圧、高脂血症、最終到達地として動脈硬化症にいきつきます。動脈硬化は、脂肪の多い堆積物(プラークと呼ばれます)が動脈壁に溜まり、周辺に炎症を起こします。血管の老化が早まるとも表現されています。その動脈壁周囲に慢性炎症を起こすのです。歯周病と似たような病態がおきているのです。そのプラークによって、そのまま動脈が詰まるのではなく、プラークが破壊し、血栓を作ることで心臓発作や、脳梗塞につながることが多いと考えられています。その過程で歯周病原菌や歯周局所 で作られる炎症生産物が動脈硬化の進展に絡んでいる可能性も指摘されています。 脂肪細胞から分泌されるたんぱく質には悪さをするものだけではなく、アディポネクチンと呼ばれる善玉があります。健康な人では、血中に高濃度で流れており、血管壁に障害が起きると、それを修復する働きをしています。この血管壁の障害はかなり頻繁に起きているといわれています。血圧が高いと物理的なストレスで起こりますし、糖質異常や酸化LDLは強く内膜を障害し、タバコも同じ悪さをすると報告されています。しかし内臓脂肪が増えると、アディポネクチンが減ってしまいます。火消し役がいなくなるので、動脈硬化が進展するのです。 近年、マウスの実験ですが、高血糖が高いまま続くよりも、繰り返し血糖を変動させる方が内膜を障害し、動脈硬化を発症させ進展させやすいことが報告されています。摂りすぎた栄養が血管を傷つけ、死に至る病に結びつく姿が浮かんできます。糖尿病になれば、慢性的な高血糖より全身の血管が障害され、網膜症や腎症が発症して、失明や透析にまでなることがあります。糖尿病患者の多くの方が心筋梗塞や脳卒中などの「血管合併症」で亡くなるといわれています。 糖尿病の合併症の原因にAGEがあげられています。ブドウ糖が体内のたんぱく質と結合して作られます。その量が多いほど血管が侵襲を受けることになります。HbA1cは赤血球のHb(ヘモグロビン)たんぱく質にブドウ糖が結合した反応物質であり、HbA1cは1ヶ月から2ヶ月前の平均血糖記録です。糖尿病の検査値としてよく使われますが、赤血球の寿命は120日と短いので、4ヶ月前の高血糖の影響は消されてしまいます。しかし体内のほかのたんぱく質は高血糖の程度や持続時間に比例してAGEとなり、血管を障害します。 さらに腎臓などに沈着し、活性酸素を作り合併症の原因となります。これが『血糖の記録』と呼ばれるもので、高血糖が改善された後も昔の高血糖の影響が続くといわれています。糖尿病患者の歯肉には、このAGEが豊富に見られることが報告されています。 最近では高脂血症そのものが、歯周病進行のリスクになるので、脂肪を減らすことが勧められています。食生活習慣に絡む医科と歯科の連携がますます必要になってくるようです。
『“食育”は歯科医療を変える』 クインテッセンス出版株式会社 丸森 英史 より
|
|