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一時は理想的として紹介された日本の食事も、現在は高脂質化が進んでおり、平成13年度の国民栄養調査での脂質エネルギー比(エネルギー摂取量に占める脂質からのエネルギー割合)は、適正比率とされる25%を上回っています。単糖類も多糖類に比べて消化吸収が速く、肥満増加の一因として指摘されています。しかも清涼飲料水などに含まれる糖質は、ブドウ糖や果糖といった単糖類が占める割合が多いのです。また日本人は、インスリン分泌能力が欧米人に比べ弱く、内臓脂肪型の肥満になりやすく、内臓脂肪組織は多くの生活習慣病の原因となり、歯周病との関連性も指摘されています。内臓脂肪型肥満によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を「メタボリックシンドローム」といい、日本における診断基準が2005年の第102回日本内科学会で発表されました。 メタボリックシンドローム診断基準作成の背景には、わが国における少子高齢化と欧米型生活習慣の浸透が指摘されています。内臓脂肪蓄積を基盤とした生活習慣病は、マルチプルリスクファクター(糖尿病、高脂血症などが一個人に複数併存)としての病態を示し、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症要因となるのです。診断基準では、必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100cm3以上)のマーカーとしてウエスト周径が男性が85cm、女性で90cm以上を「要注意」としています。そのなかで、@血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dl以上、またはHDLコレステロール値40mg/dl未満)、A高血圧値(最高血圧130mmHg以上、また最低血圧85mmHg以上)、B高血糖(空腹時血糖値110mg/dl以上)の3項目のうち2つ以上にあてはまると、メタボリックシンドロームと診断されます。メタボリックシンドロームという概念を確立することで、内臓脂肪を減少させる意義が明確になるという意味があります。血糖や血圧が少し高いけれど、安心していた患者に対しても、食事の改善や運動をすすめ、効果的な予防対策をさせようとしています。
“食育”は歯科医療を変える クインテッセンス出版株式会社 丸森 英史 より
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